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プリキュアシリーズは日常ドラマとバトルがあまりかみ合っていないところが構造的問題だと思っていた。『起・承・戦・結』という感じでバトルが全体の話と脈絡がないのである。
『フレッシュプリキュア!』はパワー配分の難しかったこのシリーズを『バトルヒロイン』に寄せてきた。街で暴れている悪者をプリキュアが退治するという構図である。悪く言えば古くさいのだが、街の人が「ありがとうプリキュア!」と言い、テレビ局の警備員も「プリキュアです!」と言えば顔パスで入れてくれる。このへん『仮面ライダーW』も街を守るヒーローとして街に住む人に認知されているのだが、こういう先祖返りはたまには必要だと思うのだ。
かといって日常ドラマを忘れたわけではなく、日常ドラマの中にバトルが突然入ってくる話も決して少なくなかったと思うのだが。『フレッシュ』のスタンスを象徴するエピソードがある。
フレッシュプリキュア! 第31話「ラブと大輔 仲直りのしかた!」
クラスメイトの大輔との野球の試合の応援に行くという約束をラブがすっかり忘れていてケンカ、仲直りする話。
ラブは結局野球の応援に駆けつけるのだけど、大輔のチームは健闘むなしく負けてしまう。
そこに敵幹部のウエスター、「サヨナラ負けか、青春は甘酸っぱいねえ」
今まで何をしていたのかと思ったら少年野球をずっと観戦してたのである。というか試合が終わるまで待っていたのである。
今までのプリキュアだったら試合の途中に割り込んできてプリキュアに「絶対許さない!」と言われている。これが『フレッシュ』のスタンスなのか単にウエスターの人柄なのか。
野球モンスターに手を焼くプリキュアは野球での勝負を提案する。ウエスター「望むところだ!」
無死満塁になるプリキュアチーム。ピッチャー交代だとするウエスターに首を振る野球モンスター。「やらせてくれだと? 信じていいんだな、この試合お前に任せたぞ」というウエスター。
余談が長くなったので次の話に行く。敵キャラの描写である。
また過去シリーズとの比較になって申し訳ないが、今までは何人か幹部がいても順番に倒されるだけで、横の繋がりがなかったのである。『Yes!』で通年出ていたブンビーを除くと。
『フレッシュ』では三幹部が作品を通じて登場している。このスタイルも古いと言えば古いのだけど、やっぱりこの方がいいと思うのだ。
人気が高いのは幹部の一人でありながら途中で正義に目覚めたイース(キュアパッション)だと思うが、自分はなんといってもウエスターである。プリキュア4人と比べてもウエスターの方が好きと言える。
ウエスターのキャラを一言で言うなら『愛すべきバカ』。シリーズのコメディリリーフになっていた。
失敗が続いてとる最後の手段というのが『他の2人に頭を下げて作戦を考えてもらうこと』だったり、公園の屋台ドーナツにやみつきになっていたり、勝手に沖縄旅行してサータアンダギーやソーキそばを堪能「サウラーも連れてくれば良かった」などと言い、FUKOゲージをめぐった割と重要っぽい戦いでは「しゃべるフェレット」を追いかけ回す役を任命され、階段の手すりを滑っていたり、ウエスターさん面白伝説は枚挙にいとまがない。
先の野球の話でもそうだが、根っからの悪人に見えない。逆にこのギャグキャラにシリアスな最終決戦がつとまるのかと思っていたら、パッションとの対決には不覚にも泣かされてしまった。
「イース、最後のチャンスだ。ラビリンスに戻ってメビウス様に従え!」
「私はもうイースじゃない!」
こんなやりとりは後半ずっとなんだけど、ささいなやりとりの積み重ねがボディブローのように効いてくる。
この回でウエスターとサウラーはメビウスによって廃棄物処理空間で消去されようとしてしまう。メビウスに捨てられたことを知ったウエスターは自分をゴミのようだと自嘲するがパッションは「あなたはゴミなんかじゃない」と言う。
「だってあなたには仲間を思う心がある、裏切り者の私をずっと仲間だと思い続けてくれた」
最後にパッションを助けて散るウエスター(あとサウラー)。ウエスターさーん!!(あとサウラー)。
まあ復活するんだけど。
作品テーマとしては「管理と秩序vs自由と助け合い」、無秩序な世界を統制する自分が正しいとするメビウスにサウラーとウエスター、
「あなたがしていたことは人々を騙し、意のままに操ろうとしていただけにすぎない!」
「だが、俺たちはドーナツの味を知ってしまった。これからは自由に生きさせてもらう!」
ウエスター、もっといいセリフがあるんじゃないの。愛だの思いやりだのよりよっぽど響く言葉ではある。
実際にラビリンス住人に感情を与えたのは人間界(カオルちゃん)のドーナツなんだけど。知恵の実か。
総括といった割にウエスターのことしか書いてなかった気がするけどラブも美希たんもブッキーもせつなも大好きですよ。
ただひとつの心配事だったエンドカードが「ハートキャッチをよろしく」じゃなかったので安心。スプラッシュスターは最後に「みんな、ありがとう」を言うことすら許されなかったのです。
『おジャ魔女プリキュア』こと『ハートキャッチプリキュア』予告。さんざんフレッシュ大好きって言った舌の根も乾かぬうちにアレだけど、これなんだ、僕が日曜朝に求めていた絵はこれなんだ。あの表情の崩し方、動きの面白さ。たぶん馬越さん自らの作画。 スタッフ一新で日常ドラマとバトルの配分がまた気にかかるけど期待せずにはいられないな。